2024年9月13日
9/12 決算委 いぬい議員 討論
9月12日 決算審査特別委員会
いぬい友美議員が日本共産党を代表して、
2023年度堺市決算について討論(採決にあたっての意見表明)
を行いました。
討論の要旨は、以下の通りです。
2023年度堺市各会計決算について日本共産党を代表して意見を申し述べます。2023年の国内外の社会情勢は、例を見ない食料品の値上げのラッシュの年となり、3年連続で1万品目を超える見通しとなるなど、物価高騰が市民の暮らしを苦しめています。
そのような状況下においても賃上げを上回る物価上昇で、実質賃金が減少しています。一方、資本金10億円以上の大企業の内部留保は、前年度比5.5%増、27.9兆円積み増し、2023年度末で539.3兆円と過去最高となりました。
食料問題については、歴代自民党政権がアメリカと財界いいなりに農産物輸入を際限なく拡大し、日本の食料自給率が38%まで落ち込んだままです。世界的な異常気象や戦争・紛争等の影響で食料の輸入が途絶えれば、日本は国内だけでまかなえません。今般の「コメ不足」は「食料安全保障」云々、以前の問題であることが露呈し、政府の減反政策が破綻していると改めて明らかになりました。
この路線を転換して食料権を回復させ、価格保障や営業補償など農業者が営農を続けられる環境整備を国の責任で行うことが必要です。農業と水産業を国の基幹産業に位置づけ、食料自給率の向上を国政の柱に据えることは、本市の農業者の持続可能な営農、なり手不足の解消、環境改善等につながるものと考えます。
大阪・関西万博を巡る問題は、政局で決定した夢洲の立地条件からくる、建設費倍増などの費用問題、アクセスの悪さ、メタンガスや硫化水素等の有毒物質の発生など目白押しです。災害問題については、9月2日に万博協会は「防災実施計画」を公表しました。大屋根リングは会場内で一番高い施設となるため、落雷の可能性が極めて高く、大屋根リングの素材が木製のためリング下での避難が出来ず、パビリオン等の屋内に入りきれない人は雷雨に晒され、屋外避難を余儀なくされます。また、南海トラフ巨大地震やテロ対策などの対策には限界があり、「安全宣言」が出せない夢洲万博は中止するべきであり、堺市教育委員会においては子どもたちを動員しないよう求めておきます。
そもそも、今回の大阪・関西万博は民間事業者であるカジノIRのインフラ等を公金で整備するためです。大阪府をはじめ堺市も博打が大阪の経済を活性化させるなどという幻想から早く目を覚ますべきです。経済効率を最優先にして生み出した社会の歪みから市民の暮らしを守り、住民福祉の向上を第一義の任務とする地方自治体の役割を堺市がしっかりと果たすことが必要です。
堺市の2023年度(令和5年度)決算は、減災基金の満期一括償還分を除く基金のうち、一時的に積み立てた職員退職手当基金だけでなく財政調整基金が増加しています。
財政調整基金については、ため込むことを目的とせず、市民生活の実態を見ながら必要なところには活用していくよう求めておきます。とりわけ、子育て・教育・社会保障など命や健康に係わるもの、中小零細企業・個人事業主への支援等は優先度が高いと考えます。
2023年度当初予算における重点施策は、「子育て世代の定住・促進」と掲げていました。ところが、8月28日の大綱質疑において、市長公室長は「令和5年の日本人の年齢別の社会動態を見ると、依然20歳代~40歳代が転出超過であり、現時点において社会動態の数値の面では明確な効果は現れていない」との認識を明確に示しました。
同時に「こうした人口減少対策の効果は中長期的に現れるものと考える」といった取り繕う弁明もありました。それとも、「財政危機宣言」による、第2子保育料無償化を無期延期とし、保育教諭等充実補助費や泉北高速鉄道通学定期代の補助に手を付け、市内外の現役世代に対し、マイナスイメージを広げた効果のことを指しているのでしょうか。
子育て支援などで先進的な事例をつくっている明石市等の取組を参考にするのは大いに結構ですが、一部を真似るだけでなく大々的かつ継続的に実施しなければ、それこそ効果は現れません。2023年度決算内容が本市の財政運営の今後の教訓となるよう切に願い、各施策に対する評価、要望を述べます。
まず、起業・創業支援事業・イノベーション創出事業についてです。決算額約1億5000万円に対しての効果について問われます。既存の中小企業の活性化も視野に入れた取り組みの拡充が必要です。イノベーション投資促進条例更新の際には、企業側に利する内容だけではなく、正社員雇用などの条件付けをするよう求めておきます。
また、中小企業の支援事業においては、人材育成やスキルアップの支援だけでなく、条件を問わない固定資産税の減免の拡充や商店リフォーム助成制度、本市独自の無担保・無保証融資制度の創設など、物価高騰・円安・人手不足等で苦しむ中小零細企業・個人事業主に対しての直接支援を求めておきます。
次に、ふるさと納税についてです。昨年度本市におけるふるさと納税全体の収支は2億6000万円のマイナスでした。地方自治体の健全な活動を維持するためにふるさと納税に頼るのではなく、必要なところには予算をつけて配分するよう国に求めてください。本市が返礼品競争に参加していくことで、本来自治体が行うべき住民福祉の向上が疎かになることのないよう求めます。
次に都市OSについてです。「my door OSAKA」の利用について、デジタル通知を受け取る手続きにはマイナンバーカードの読み取りが必須となっていますが、マイナンバーカードの取得は任意であり、取得しない人が行政サービスを受けられない状況は公平性の観点から問題であると考えます。「my door OSAKA」に関する情報セキュリティについて、堺市が取り扱う範囲については「my door OSAKAに関する情報セキュリティ実施手順」を策定中であるとのことです。市民の個人情報が漏洩することのないよう管理を徹底することを求めます。
次に、SMIプロジェクト都心ラインについてです。市民ニーズのある公共交通施策等には「財政見通しは厳しい」と住民要求に背を向ける一方で、市民が求めない計画に26億円以上もの巨額を投じることは認められません。大小路での自動運転バス導入はいさぎよく諦め、市民の要望に沿った交通政策を進めることを求めます。
次に、市営駐輪場の学生料金についてです。学生や子育て世帯の経済的な負担を軽減するために、市営駐輪場の学生料金は使用目的を通学に限らず、いつでもどこでも適用されるようにすることを求めます。また、定期使用だけでなく、一時使用時にも学生料金が適用されるよう求めます。
次に、本市の空き家対策及び定住支援についてです。昨年度の子育て世帯等空き家活用定住支援事業の実績は30件分の予算枠に対して申請が10件でした。空き家対策と定住促進のために、申請者が増えるよう制度の拡充と周知に努めるよう求めます。同時に若者世帯向けの家賃補助制度の創設を求めます。
次に就学援助についてです。就学援助は、日本国憲法26条第1項の精神を拡充させた教育基本法第3条2項「国及び地方公共団体は能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難なものに対して、奨学の方法を講じなければならない」と示されたうちの制度です。2022年度(令和4年度)の就学援助事業における決算時の剰余金は約4500万円です。
これまで求めてきた1.3倍へと引き上げた場合、同程度の額で、現在、申請しても非認定とされている約550人の児童生徒を認定することができます。早急に就学援助の基準を引き上げ、認定者を増やすよう求めておきます。
次に、学校園のエアコンクリーニング整備についてです。エアコンの老朽化が進み、猛暑日が長期化しているなか、「エアコンの効きが悪い」と学校現場から声が寄せられています。しかし、現状把握が行われておらず、問題解決に向けた取り組みが実施できていません。現状を把握し、必要な予算の拡充を求めます。
次に、学校エレベーター設置についてです。文科省は、要配慮児童生徒等が在籍するすべての小・中学校のエレベーターの設置について2025年度末までの整備目標を示しています。本市においてもそれに沿って小中学校のエレベーター設置を進めていますが、合理的配慮は、事前に備えておくことが重要です。国の目標値に甘んじることなく、全校設置を目指すよう求めます。
次に、ストーマ装具支援についてです。本市における日常生活用具普及事業における給付対象の付属品に医療用ガーゼが入っていません。一部のオストメイト患者に対して退院指導で行う指導で医療用ガーゼは必要物品となっているにも関わらず、本市においては自己負担となっています。また、清潔操作が必要なストーマケアがあるため、医療用ガーゼを障害者(児)日常生活用具給付事業で給付できる品目に追加することを求めます。
障害者福祉施設整備補助より、グループホーム支援事業については、スプリンクラー設置義務が生じたグループホームの負担を軽減するため、現在の市の補助4分の1をさらに拡充することが必要です。市民にグループホーム新設の際などで周辺住民に理解・協力が得られるよう知らせる取り組みを求めます。
次に、骨髄移植普及促進事業についてです。骨髄バンクのドナーは18歳~55歳までの年齢制限等があり、5年以内に約13万人のドナーが卒業します。現時点で、毎年約2,000人の白血病等患者がドナーを待っています。白血病等の患者の命を守るために骨髄バンクドナー募集の啓発活動をおこなうことや骨髄移植時の休業支援を引き続き行うことを求めます。また、学校や仕事を移植のために休んでも支障のないルールづくりを進めていくよう求めます。
次に、防災備蓄整備事業についてです。避難所外避難者分を考慮し目標値が更新されており、備蓄食料の目標値は昨年度から2023年度49万9115食へと増えていますが実績値は41万8790食であり、早急に目標値に達するよう要望します。災害時に円滑に避難所外避難者へ物資を届けられるよう普段からのコミュニティを構築・強化し、在宅避難となることが想定されるマンションの住民との関係づくりに堺市としても支援することを求めます。
次に、性暴力被害への対応についてです。性暴力根絶のために啓発を強め、被害にあった時の相談先について、安心して相談できる窓口であることが伝わるよう、各窓口や機関の体制や特徴も含めて周知するよう求めます。本市の性暴力被害者支援を強化していくためにも性暴力救援センター大阪SACHICOの活動の存続は必要不可欠であり、本市としてもそのための支援や大阪府への要望を行うことを求めます。
次に、外国人の差別解消に向けた取り組みについてです。本市在住の外国人人口が増えているなか、無意識の差別も含めどのような言動が差別になるのか啓発を強めることを求めます。多言語での情報発信と啓発に努め、文化や生活習慣の違いも尊重し、誰一人取り残さない社会の実現に向けた取り組みの推進を求めます。
次に、パートナーシップ宣誓制度についてです。ファミリーシップ宣誓制度の導入、宣誓受領書の文言変更、宣誓によって受けられる行政サービスの拡充など前進が見られることは評価します。引き続き、同性婚実現を願う当事者が宣誓によって法律婚と同様の権利を享受できるようにしていくことと、事実婚関係や選択的夫婦別姓を求めるカップルも対象として認めることを求めます。
次に自衛官募集事務についてです。自衛隊に市民の個人情報を提供することについて、防衛省は「拒否しても自治体に不利益はない」としており、強制でもありません。むしろ個人情報提供に応じることで市民のプライバシー権の侵害や職員が本来行うべき業務が止まるなど不利益が生じています。今後自衛隊からの個人情報提供依頼には応じないこと、少なくとも本人の同意なく個人情報提供することのないよう求めます。
次に、国民健康保険事業についてです。この間、国と大阪府が押し進めてきた国保の完全統一は、国保料を際限なく引き上げ、黒字になって貯まった国保基金の活用や自治体独自の減免制度も禁止されるものです。本市における激変緩和措置後の一人当たりの保険料は、2018年度(平成30年度)の86,932円に比べ27,013円上昇し113,945円となっており、当局も「全国で高い方」と認めました。
昨日の総括質疑において当局は「医療費水準の差がないことは完全統一の前提条件になっていない」旨の答弁をしました。しかし、医療費を含めたすべての事業費を納付金計算に入れこむ大阪府「完全統一」の基本的な考えには「受益と負担の公平性」と示されています。つまり、「受益の差」として表れる「医療費水準の差」を無視したものになっており、当局の答弁は不正確です。
また、「大阪府国民健康保険運営方針」における「完全統一」には法的拘束力が無いにも関わらず、基金の独自活用や独自減免を禁止する矛盾を抱えています。これは「国は地方財政の自主的、且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自立性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策をつくってはならない」と謳う地方財政法第2条に抵触するものだと指摘しましたが当局は現実を見ようとしません。一方で、国は地方財政法に抵触する可能性を十分認識しているだけに、敢えて「技術的助言」とした通知を発出し、箕面市における一部の被保険者に保険料減免の代替となる一般財源を活用した事業が適切ではないとの見解を示しながら、其の実は禁止を求めています。
国民健康保険料を決定する権限は現在も市町村にあります。本市は国民健康保険法のもと「社会保障の向上に寄与する」ことを目的として位置づけられていることを再確認すべきです。保険料を際限なく上昇させる大阪府完全統一から離脱し、本市独自の基金活用で保険料を引き下げながら、国に対しては公費1兆円の投入で協会けんぽ並みに保険料を引き下げ、市民生活を守り、国保運営の安定化を図ることを求めるよう要望します。
以上、各施策について評価を述べてきました。総合的に見て、市民の生活実態に寄り添った決算内容とは言えないため、2023年度堺市決算認定には同意できないことを申し述べ、日本共産党の意見とします。