きびしい冬もやっと終わり、暖かい春の兆しが、見えてきました。
皆様お元気ですか。
2月は、議会準備に明け暮れてあっという間に逃げ去ってしまいました。
3月が去ってしまわないうちに議会報告をお届けいたします。
今度の市議会は、平成24年度の当初予算を決める定例市議会でした。
予算規模は、一般会計では、
3510億円(前年より81億円、2.4%増)
特別会計(国保、その他)水道事業等を含む全会計では、
6421億円(前年度より38億円、0.6%減)
となっています。
「具体の施策では、まず、災害に強い街づくり推進として、
市民生活の安全・安心を第1に考え、学校園施設を中心とした耐震化…」と、「平成24年度当初予算の概要」での竹山市長の報告です。
私は、2月29日の本会議におきまして、大綱質疑(代表質問)に立ちました。そのうち2つのテーマについてご報告いたします。
来年度(平成24年度)中学校で武道必修化
来年度より学習指導要領にもとづいて、中学校で武道が必修となります。
43ある市内の中学校のうち29校が、柔道を選択したと聞きました。剣道や長刀・相撲などを選択する学校もあります。
先日来テレビや新聞でも、取り上げられていますが、柔道による学校での事故は多発しています。この28年間で、学校管理下における柔道による18歳以下の死亡事故は、114名ということです。
(全国柔道事故被害者の会のH 23年2月7日の国への要望書から)
授業での指導内容は?(学習指導要領より)
中学1・2年:保健体育において、武道は必修となっており、技能に関しては
「技ができる楽しさや喜びを味わい、基本動作や基本となる技ができるようにする」
中学3年:球技と武道のどちらかを選択する扱い。(堺市では球技)
「技を高め勝敗を競う楽しさや喜びを味わい、得意技を身につけることができるようにする」ということです。
施設設備は安全か
全日本柔道連盟の冊子「事故をこうして防ごう~柔道の安全指導」にはこのように書かれています。
「柔道場の床にスプリングなどの衝撃吸収装置があり、経たりのない弾力性に富む畳は安全性を確実に高めます。しかしこの条件が備わっていない仮設道場でも、衝撃吸収マットをしくことで、ある程度代替できます。又投げ込み練習の際には、投げ込み用マットを用意するなど、衝撃を可能な限り和らげる工夫を行うことで、危険回避に役立てることが、できる。」
では、堺市の対応はというと、
「柔道において使用する畳については、体育館の床に敷いた際に移動しにくく、生徒が投げられた時の衝撃を吸収する安全性の高い、」滑り止めつきソフトタイプの畳を整備しております」ということでした。
学習指導要領の内容は、「技ができる楽しさ喜び…」です。技をかけられた側にも「楽しさや喜び」があるのですか?現実は全く違うと思います。
「ソフトタイプの畳」は、期待通りの「衝撃吸収」効果を発揮するものなのか。私には、判断の根拠はありません。今後の指導では慎重な見極めが必要です。
なくせ柔道事故(しんぶん赤旗[2011年1月23日]連載記事より)
昨年1月、全国柔道事故被害者の会主催のシンポジウムが行われました。
1983年~2009年の27年間で、学校での死亡事故110人
(2010年には6人の子どもが死亡しています)
脳障害などの後遺症を伴う障害事故 261件
練習と言う名の虐待(1月25日付け)
2009年7月滋賀県愛荘町立中学校1年の村川康嗣君が柔道部の練習中に意識を失い、約1ヶ月後に亡くなりました。事故当日の経過は、技を掛け合う乱取りを上級生相手に50分以上連続、「足元がおかしい」「ふらふらしていた」とすでに脳損傷による意識障害の兆候が出ていた。にもかかわらず、有段者の顧問は「声が出ていない」との理由で乱取りを続けさせた上、受身のむずかしい「大外返し」で投げました。意識を失った村川君の顔を平手で打ち続け覚醒させようとした…と記事に書かれています。こうしたことが日常的に行われていたということです。村川君は、柔道初心者。お母さんは、息子はぜんそくの持病があり、スポーツ未経験者だったことから顧問らに再三、練習内容の配慮を求めていたとのことです。ところが正式入部10日後にふくらはぎの筋断裂。又防塵マスクをつけてランニングをさせていたこともわかりました。
生徒の心身の健全な成長発達をめざす教育として、あるいはスポーツとしての柔道の根本精神をも損なう実態ではないでしょうか。
頭打たなくても脳損傷(1月26日付け)
神奈川県立足柄上病院脳神経外科の野地雅人医師は、「脳が速くゆすぶられることで起きる脳の『加速損傷』は、急性硬膜下出血につながる怖いもの(中略)問題は、頭を打たなくても脳が損傷することを現場の指導者の多くが知らないことだ。」と指摘しています。
被害者の多くは中学・高校生(全日本柔道連盟安全冊子より)
死亡や後遺症を残す重大事故の被害者の多くは、中学生や高校生です。
特に中学生に集中しています。
また、柔道経験1年以内が全体の23.6%です。
来年度、中学校で武道必修化となれば、どれだけ手厚い事故対策をしても十分ということはありません。
指導者の体制はどうでしょう
堺市の体育科の教員で、柔道指導経験者数は、46人ということです。
柔道の安全指導に係る実技研修会は42回実施し、柔道実施の学校は、最低1名以上の保健体育科教員が受講しているということでした。私は、さらに複数で指導に当たることも必要ではないかと質しました。答弁は「支援を要する生徒については平素からその状態に応じた指導を行っており、柔道についても同
様の配慮を行うということでした。
柔道事故の世界の状況
今や、柔道は日本だけではありません。フランスの柔道人口は日本の3倍。しかし、2005年以降、18歳以下の死亡事故は、ゼロです。「フランスの柔道は優しい。相手に勝つことよりも行儀や礼儀作法を重視し、激しい乱取りはしない…」溝口紀子(元フランス代表チームコーチ・バルセロナ銀メダリスト)
イギリス、アメリカ、ドイツ、オーストリア等でも18歳以下の死亡者は、ゼロです。正しい知識と練習方法。何より人格尊重と安全第1の徹底でこうした事故は防ぐことができるのです。
日本でも、全日本柔道連盟は、2013年度から指導者資格制度を取り入れる予定です。
新しい動き(調査ニュース3月号)
この大綱質疑の後、新しい動きが出ています。
文科省は、学校の体育授業や運動部活動中の死亡事故などの防止策をとりまとめた方針を表明しました。2012年度から中学校1・2年生の武道必修化を踏まえ、柔道については受身指導の徹底などで安全を確保するよう要請するということです。
1998年から2009年までの学校スポーツ活動中に発生した死亡事故は470件にも上っています。(ダントツに多いのが柔道です)
半身付随と言った重度の障害が残る事故は120件です。…突然死については、心臓疾患のような既往症があったケースが2割超ということから、
(1) 許容される運動レベルなどの事前確認の徹底
(2) ランニング中のラストスパートの回避
などが出されているということです。
堺市では、
堺市教育委員会は、武道必修化に関連して柔道の授業では「大外刈り」「大内刈り」など後方に倒れて頭を打つ可能性のある一部の技の使用を禁止する方針をかためた。
3月までにまとめるガイドラインでは、指導を行う技として「体落とし」や「膝車」「支え釣込足」を例示するということです。
子どもたちの命と心身の健やかな成長のためにも、安全第1の教育条件、少人数学級の実現を強く求めてまいりましょう。
中学校給食について
堺市では、来年度市内43校すべての中学校で、ランチサポート事業を実施します。弁当代金は280円.2事業者に委託しての実施です。
委託料は7363万1千円。
そもそもランチサポート事業とはなんでしょうか。
以前の中学校給食実施についての文科省調査では、全国平均の実施率は、80%以上でした。ところが大阪府は7.7%です。全国最低です。
大阪府は、かねてよりの方針であった家庭弁当持参の補完支援策として、スクールランチを実施してきました。そして平成21年2月に「大阪府公立中学校スクールランチ等推進協議会」の最終報告をまとめました。
スクールランチ(ランチサポート)事業の定義は、
衛生管理、栄養価・栄養管理者の関与などにおいて市町村が法上の学校給食にきわめて近い形式で実施することを前提としており、調理・準備方法は、校外調理による配膳方式とし、運営は家庭弁当等との選択制によりおこなうもの」
「当該市町村における中学生の食育の推進や保護者の負担軽減を直接的な目的としていますが、同事業の円滑な実施により、順次施設設備や運営面での体制構築等が整えば法上の学校給食導入を目指すことを最終的な目的とする配食事業」と位置付けています。
また、実施運営に関して15項目の基準が示されています。そのうちいくつかを選んで、堺のランチサポート事業において満たしているかどうかを聞きました。
●?実施回数:原則毎週5回、年間180回とされていますが、堺市はこれは未定です。
●?食費:1食250円~350円。堺市は280円です。
●?保存食、検食;保存食は調理場で、検食は各学校に義務付けられています。
堺市では、保存食は行われていますが、検食はしていません。
●?方向性:スクールランチは法上の学校給食ではないが、将来的に法上の学校給食をめざす。堺市はこれも定かではありません。
ならば、ランチサポート事業はこれからも43校すべてで行うのかと聞けば、それも不明です。
来年度「食に関する調査」を行うとし、その結果によって方向が決まるのかも知れません。
堺市が中学校給食実施を行わない理由は、どこにあるかと言えば、平成20年3月に行われた府の調査にこのように答えています。
「小学校給食の安全対策に全力を注いでいるのが現状です。施設設備に伴う経費給食設備の設置場所指導上の体制づくり等の課題があり、現時点では実施困難であるため。」
確かに17年前のO157の食中毒事件は、3人のかけがえのない子どもの命が奪われた大変な事件でした。2度と繰り返してはならないことであります。
しかし、だからといって中学校給食をやらないことにはなりません。中学校の給食は、全国で8割。大阪府下でも1割をこえる実施の状況です。
ランチサポート事業といえども、いったん食中毒が起きれば当然のこととして調理を行った事業所は営業停止。学校管理下における事故・健康被害であり、教育委員会・中学校の責任が問われます。
かけがえのない中学生の心身の健やかな成長発達のために1日も早い、堺市の中学校給食の実施を求めるものであります。
市民のみなさん実現に向けて頑張りましょう。
まもなく桜も開花することでしょう。春を楽しみましょう。