「残業代は固定で支払い!?」~決めた以上残業代は請求できない?

2015年8月25日 堺総合法律事務所 弁護士 村田浩治

私の職場は、飲食店でほぼ毎日、1時間から2時間の残業があり、月に30時間近い残業がありますし、土曜も仕事をしています。弁護士さんに相談したところ、残業代には割増賃金があると聞いたので、請求したら、店の経営者から「うちには基本給の外に職務手当として毎月5万円出しているから、残業代は支払っている」と言われました。確かに給与明細には、基本給10万円、職務手当5万円と書いていました。先月の私の労働時間は勤務日数25日、労働時間は230時間になっていました。私はこれ以上残業代を請求できないんでしょうか?

A

ご相談の件では、残業時間規制の問題、割増賃金の計算方法、最低賃金の3つの問題があると思います。

1、残業時間規制違反

まず、労働基準法には一日8時間、週40時間以上、労働させてはならないとされています。したがって、一日8時間を越えて10時間も働かせることは出来ません。残業させるためには、緊急事態など法律で定められた緊急の場合(労働基準法32条)以外には、残業させることが出来るという労使協定(労働者の過半数を代表する労働組合などとの協定)を締結しなければなりません(労基法36条)。これらの協定が無い場合、残業させてはならないとなっています。したがって残業代を前提にしているという経営者の主張はそもそも通りません。

2、割増賃金と計算方法

上記のとおり、本来残業は例外的に認められる労使協定が必要ですが、実際に残業をしている場合、残業した時間については、通常の賃金の25%の割増をした賃金を支払うことが義務づけられています(労基法37条)。
経営者が職務手当の中に残業代が入っているといっても、残業は本来決められた時間を越えた場合に払う事になっているので、予め決められているのはおかしいといえますが、残業代を含むという記載が契約書に書かれているような場合もあります。しかし、そのように書かれていても職務手当が残業代の何時間分にあたるのかが明確に記載されていない場合は本来残業しなくても支払いがされる前提で職務手当が支給されているはずですから、5万円分が残業代とはいえないといえそうです。
契約書にも就業規則にも5万円の職務手当に残業代が含まれると書いているだけでは、ただちに5万円が残業代ということにならないというべきです。月230時間の労働をしているということは労基法の1日8時間週40時間が労働時間の最低基準と定めているので、月にすると約173・75時間くらいが所定労働時間となりますから、それを超えた66・25時間時間くらいが残業として計算できると思います。
計算式は
通常の賃金の時給  150000円÷173・75= 863・30円
割増の賃金の時給  863・30×1・25=1079円
割増賃金      1079円×56・25=60693円
あなたは割増賃金を6万693円請求出来ると思います。

3、最低賃金

ところで、もし経営者が基本給10万円が給与で、あとは残業代なんだと主張することはもうひとつ問題があります。地域によって異なりますが、給与で合意できる最低賃金は制限されています(最低賃金法)。大阪府の場合は、時給換算で838円が最低賃金となります(平成26年10月5日決定額)。したがって月173・75時間働いても10万円ということになると、時給換算では575円ということになりますので、最低賃金違反になります。月額15万円が賃金だとしても時給863円あまりの給与は実はぎりぎり最低賃金をクリアしていることが分かります。経営者の主張がとおることはないといえます。 こういう問題も一人一人がきちんと知識をもって対処することで改善出来ます。労働者の権利を守るために、ひどい目にあった人がきちんと権利主張することが大切だということです。

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