平成25年度予算に対する討論

2013年度当初予算案に対する日本共産党の意見を申し上げます。
昨年の総選挙によって、3年半ぶりに自公政権が復活しました。総選挙では、自民党が「勝利」しましたが、国民のくだした審判は「民主党政権ノー」であり、自民党の掲げた政策が信任されたわけでは決してありません。総選挙で問われた政治課題は、どれも決着がついていませんし、いっそう切実な課題となっています。
いま安倍・自公政権による消費税増税、原発再稼働、TPP問題など、いのちとくらしにかかわる大問題が押し寄せています。
さて竹山市長が就任されて3年半が経過しましたが、この間、LRT計画(425億円)、堺東再開発(350億円)など大規模公共事業を中止する一方、いち早く中学校卒業までの医療費助成を実現し、国保料の連続引き下げ(4年間で約8000円)、各種ワクチン接種への助成、今予算案では、「お出かけ応援バス」の充実などに取り組まれています。
これらは長年、市民の切実な願いとして、市民運動がすすめられ、わが党も市民との共同した運動を進め、議会でその実現を追求してきたものです。
また、市長は、「市民の目線で市政をすすめる」をモットーに、庁議や予算編成過程を公開し市政の透明化を図り、タウンミーティングの開催など市民の声に耳を傾ける努力を進めてこられました。
同時に、今年秋の市長選を前に、橋下大阪市長が「堺市にも(大阪都に)入ってもらわないとダメだ」「同じような考え方の市長が誕生しなければ『大阪都』構想はすすまない」と堺市政の転換を公言しています。この点竹山市長は「大阪府市統合本部」や「大阪都構想」にくみせず、政令市としての堺をさらに発展させることを表明しておられますが、堺市の今後がどうなるのか市民の熱い目が注がれています。
地方自治体として住民福祉の向上を図るには、国による「自立・自助」や「適正化」の名による社会保障切り捨てに抗して、市民の暮らしを守る確固とした姿勢が求められます。その上で、くらしと福祉を優先し、市民生活向上にむけて市政の持てる力を注ぐこと、また災害に強いまちづくりを進めることであります。次に、産業政策では、市内商工業者の支援を強めることにより活気をとり戻すこと。併せて、子どもたちの健やかな成長・発達を保障する教育を推進することが必要であります。さらには、憲法を生かして、自治都市・堺をよみがえらせることが最も重要と考えています。
政令市としての権限・財源を生かして市民本位に前進させる観点から、本予算案に以下の各点にわたり意見を申し述べます。
最初に、予算案全体を性質別内訳でみたとき、貧困と格差社会の進行や高齢化を反映して扶助費が47億円増など社会保障関連経費が増加していることや、クリーンセンター関連の物件費や堺病院に関する貸付金の増加があります。一方普通建設事業費については25億円の減となっていますが補正予算を含めれば30億円の増となっています。その要因の一番大きなものは阪神高速道路大和川線事業の132億円です。わが党は普通建設事業費が開発型の大規模公共事業によって増加することに賛成ではありませんが、この大和川線事業そのものは政令市移行に伴い大阪府から引き継いだものであります。29億円の南海本線連続立体化事業も引き続きの事業です。その他、橋梁耐震化を含めた道路橋梁維持費や学校園施設の耐震化の予算などにより、増加予算となっています。
竹山市長が組んだ最初の22年度当初予算案審議において、これまでの開発優先の枠組みから市民の暮らしを直接応援する方向にシフトして組んだ予算かどうか問われると指摘し、翌23年度予算、24年度予算についてその方向性をみて賛成しました。市長は2月15日の初日本会議において、「生活支援は基礎自治体の機能そのものであり、市民が暮らしやすいまちとなるよう引き続き市民生活をしっかりと支える」とされました。
今年度予算はその意味で、市長の言葉が反映しているかどうかについて、不十分な要素が多分にありますが、また施設費の増加が目立ちますが、全体として開発優先の枠組みから脱していることは一定の評価ができるものであります。
なお、市債残高の推移でありますが、25年度末の見込みが3999億円となっており、21年度末に比較して、1084億円もの増となっています。その内容をみてみますと、一番大きく増えているのが本市の責任ではない臨時財政対策債で653億円の増であります。その他、大和川線事業を中心とした土木関係で158億円、クリーンセンターなど衛生関係で162億円、これらに加えて堺病院の第3セクター債が112億円などとなっています。
今後文化観光拠点施設や市民会館など大型の施設建設が予定されています。開発型ではなく必要な施設であっても財政圧迫の要因となります。生活支援の予算を圧迫しないよう全体の予算配分に十分な注意が必要であることを申し上げておきます。
さて、個々の事業予算でありますが、………………
本予算案には本市が政令市移行に伴って、直接の事業以外に、負担金としての費用が組まれています。大きなものとして府債償還金が23億円、阪神高速道路株式会社への出資金22億円があります。わが党は政令市移行前年の平成17年第3回定例会において、移行に伴い必要となる費用に比較して、それに見合う必要な財源が保障されていないことについて質問を行いました。
道路残債についても詳しく論証を行い、大阪府との協議において府の言い分をそのまま聞くべきではないとして協議のやり直しを求めました。当局からは「総額自体も協議内容により変動するものであり、また、その検証につきましても今後具体の協議の中で行なう」との答弁でありました。今回道路に関する府債償還金460億円について177億円を減額し、283億円として合意したとのことであります。このことについては当然のことでありますが前進面として評価できるものであります。
また大阪府と大阪市との共同事業が60項目にのぼるわけでありますが、その内一番大きなものが阪神高速道路株式会社への出資であります。これについては毎年多額の出費がなされる訳であります。そこでこれに関連して一つだけ申し上げておきます。
大和川線ができますと自動車排気ガスからの大気汚染物質が増えることは確実であります。自治体の立場に加えて出資者としての立場もあるわけですから、窒素酸化物・NOXの脱硝装置の設置を求めることを含め、市民の健康を守るための対策を阪神高速道路株式会社に要請を行うよう強く求めておきます。
公共交通利用促進策として「おでかけ応援バス」の拡充はおおいに評価するものです。
ただ拡充するのであれば土日も利用できるものにすべきであります。この制度はもともと高齢者のおでかけを支援する制度として、当初は、5日、15日、25日と月3回の利用でスタートしたものでありました。その後、5・10日の月6回に拡充したものの、いつでも利用可能にとの利用者の声は年々高まっておりました。この度、高齢者施策を改め、公共交通活性化策の一環として改変されました。おでかけ応援バス利用が公共交通の乗降客の増加策に有効であり、意義あることとのより積極的な位置づけがされました。ただ、実施に伴いコミュニティバスをこの際廃止することは、北区や南区のように一定の利用者がある地域では影響が大きく再検討が必要であります。せっかくのおでかけ応援制度拡充で高齢者に歓迎されるのに片方で切り捨てることはすべきでないことを申し上げておきます。
また阪堺線の低床式車輛導入は路面電車の活性化につながるものであります。またICカード導入により路線バスと結節し、おでかけ応援制度も利用できることにより着実な利用拡大につながることはまちがいありません。今後さらに阪堺線の利用が増えるよう旧環濠都市の整備や世界文化遺産指定など、さらなる努力を求めておきます。
まちなかソーラー発電所推進事業は、1軒当たりの補助額が1kw当たり6万円であったものが3万円に半減されています。1軒当たりの補助の上限を4kwから6kwに引き上げたことで1軒当たりの補助額を同程度にしたとのことですが、本市のソーラー発電にたいする補助額は全国でもトップクラスで他市から問い合わせがあるほど本市として誇るべき施策であっただけに残念でなりません。「クールシティ・堺」の象徴でもあっただけに、ぜひこれは元に戻すべきだと申し上げておきます。
市長はニア・イズ・ベターということで、区役所機能と区長権限の強化の方向を打ち出され、これまでの「区民まちづくり基金」に加えて1校区100万円を上限に「地域まちづくり支援事業」を創設し来年度も継続し、今年度からは区局連携の事業を目玉として計上されています。地域の自主性を引き出し、独自性ある区役所づくりとしては一歩前進であります。ただ本会議でも指摘したように、道路や公園等の事業を単に原課に予算計上する連携から、区役所が区の独自性に応じた計画ができる権限と財源をどのように持たせていくのかがこれからの大きな課題であります。これを一過性のものに終わらせず、さらなる区役所機能強化につなげて行かれるよう強く求めておきます。
併せて、市民協働について自助と共助の果たす部分が強調されるあまり自治会などが担う分野が増やされています。本来、市が直接責任を持たなければならないことはしっかり果たすことが求められることも申し上げておきます。
くらしと福祉を第一に市民生活向上にむけて市政を運営する上で、肝心な点は職員の気概であります。要員管理による職員削減は、限界に達しています。人員数も正職員の数はピーク時から見て実質的に2,400人ほど減らし、現在の要因管理計画によれば、平成21年度から平成31年度にはさらに1800人の削減計画となっています。庁議でも人員面で限界にきていることが問題とされ、技術・業務の継承の必要性、周辺業務を外部委託することの弊害について発言があるように問題が顕在化しております。市の業務量は変わらない中で、非正規に置き換えることに現場からも危惧する声が出ています。正規職員を非正規に置き換えれば、経費削減となる節減効果ばかりを追い求めていいはずがありません。
たとえば、保育士においても、また子ども相談所での虐待問題対応でも、非正規職員ではさまざまな制約があり十分な対応はできないのです。生活保護行政のケースワーカーもそうであります。市民と直接接する現場では、必要な数の正規職員での対応が求められるのです。単に人件費を少なくして財源を生み出せばよいとする立場では、真に市民サービスの向上とはなりえないことを強く指摘しておきます。
次は学校教育、中学校の昼食についてですが、堺市では、家庭弁当持参が、基本ですが、約1割のこどもは持ってきていないという実態です。補完支援策でランチサポート事業が全校で実施されています。しかし昨年実施されたアンケート調査でも、補完率は半分です。そして、ランチサポート事業モデル実施の調査でも、昨年の「食に関するアンケート調査」でも「昼食に何も食べなかった」という回答があります。朝食欠食と同様昼食の欠食も深刻な問題です。欠食の理由は、貧困や家族関係、中学生の特質など様々に考えられます。しかし、食育の観点からも、生活指導の面からも解決しなければならない重要課題です。
全国では80%以上、大阪府下でも13%の中学校で学校給食が実施されています。中学校給食は、もはや避けて通れない課題です。実施に向け、取り組みを進めてください。強く要望いたします。
学力をつけるためにとして実施されている放課後マイスタディ事業についてはこれをすべて否定するものではありませんが、本来力を入れるべきは、少人数学級の促進で、一人一人行き届いた授業で着実に学力の向上を図るべきであります。そのことを特に強調しておきます。
のびのびルームの待機児童対策として「堺っ子クラブ」が15校に増やされる予算となっています。
新年度4月には堺っ子クラブで180人を超えて受け入れをおこなう校区があります。
専用教室が4教室、共用教室を2教室使用しての保育は現場の職員にとって大変な苦労となります。
そもそものびのびルームには専任指導員は1名しか配置されておらず、これまでさまざまな問題をもたらしてきました。専任複数体制で子どもたちの安全を確保する体制を検討すべきであります。また施設の増設で待機児童の解消をめざすことを求めておきます。
また、のびのびルームの保育料は8000円と大変高額となっています。加えて2005年に保育料の兄弟減免制度を廃止しました。保育料引き下げと共に兄弟減免の復活を求めます。
平成25年度までに待機児を解消するとして、これまで民間保育所の創設・増改築、認定こども園や認証保育所、私立幼稚園預かり保育推進事業、駅前保育所事業などさまざまな事業で待機児解消に取り組まれてきました。
しかし現実は園庭がなかったりあっても狭くて遊び場が確保できなかったり、つめこみでお昼寝の時に寝返りもできないなどの課題があります。
単に待機児を減らせばよいというものではなく保育の公的責任を明確にして認可保育所の創設・増設によって待機児解消を図ることにさらなる努力を求めます。
高齢者及び障害者施策についてであります。
特養老人ホームは新たに516床を増加されますが、特養待機者の数に全く追いついていないのが現状です。計画を前倒ししてでも増床することが必要であります。また、一人暮らし高齢者の社会的孤立防止や、要介護認定を受けていないが、なんらかの介護予防事業への参加が望ましい方への手厚い支援は、今後一層強められるよう求めておきます。
障害者施策のひとつであるショートステイが少なく予約ができない状況は深刻です。本予算案では600万円の国庫補助を利用した建設補助事業の予算900万円が盛り込まれました。
市の財源は300万円です。しかし、以前は市単独で2800万円の予算をもって施設整備を図っています。そのことと比較すれば、必要性からみて全く不十分であります。
両親が病気になり、入院しなくてはならない事態になっても子どものショートステイの予約がとれるまで、入院を2ケ月延期したという方や帰るべき家がない長期利用者が大勢いてロングショートという形で長らく滞在せざるをえない方もいらっしゃいます。
ある保護者は「ショートステイは障害者家族にとってのセイフティーネット。堺市として弱いものの立場にたった行政を実現してほしいと切実な訴えをされています。
堺市としてショートステイ整備の補助の充実、また生活の場であるグループホームやケアホームの整備をしっかり実施していただきますよう求めておきます。
それから、ごみ処理の東工場の基幹改良工事と臨海工場新設についての財源について、国の東日本大震災の復興予算が充てられることについて議論があります。この件については、堺市としては「この事業を通常枠で要望したが、環境省から復興枠の予算でと内示があり、検討の結果、趣旨が合致したので申請した」とのことであります。堺市の対応について、被災現地の復興が遅れているもとで、国と自治体との関係から受け入れたとしても、安易であったことは否めません。他の問題もそうでありますが、国に対して毅然とした対応が求められます。加えて、本市は現地支援を引き続き行っています。担当職員のみなさんのご苦労に敬意を表すると共に、堺市として今後も最大限の貢献をされるよう求めておきます。
最後に、本予算案には、教育に対する基本的な考え方や職員を減らし非正規労働者を増やすことなど重要な問題で賛成できないことや高齢者施策や障害者施策など、個々に見て同意できない点が含まれております。しかし、市長の姿勢として「市民にやさしい基礎自治体」として市政の見える化の立場で市政運営をされていること、それが本予算案にも反映していることを我が党は積極的なものとして評価したいと思います。
以上申し上げてきましたように、重要な問題で同意できない点についてはこれを留保いたします。同時に全体としての評価については、政令指定都市としてのスケールメリットを生かして住民福祉を一層増進させること、さらなる権限と財源の移譲による身近な区役所づくりを進められることを期待し、本案に賛成することを表明して討論といたします。

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